BAR こてっちゃん

お酒のエピソードは面白い!ウイスキーや日本酒などこてっちゃんが気に入ったお酒の話を交えながら紹介していくブログです

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【日本酒】人生何が起こるかわからない!奥播磨【兵庫・下村酒造】

今回紹介するのは奥播磨です

<純米酒造りにたどり着くまでのエピソード>

下村酒造の元々の経営方法

元々下村酒造さんは三倍増造酒(三増酒)を造っては灘に桶売りすることで何とか経営をしていましたが、他の酒蔵同様、日本酒の消費が減るにつれて灘が買ってくれる量が減っていきます。このままでは廃業していってしまうのでは、と思っていた時に転機が訪れるのです。

 ※三増酒について知りたい方は下の記事をご覧ください

www.bar-kottechan.work

 

差し伸べられた救いの手、そして厳しい条件 

そんな状況の中、地元で良い提携先を探していた、大手酒造メーカーの剣菱から桶買いの話が舞い降りてくるのです。ただし条件は、山田錦を使う事麹は手作りにして山廃仕込みにすることなど品質を徹底するという厳しい条件だったのです。特に今まで三増酒造りしか、してこなかった下村酒造さんにとっては、麹室もないことから麹の手作りという条件が厳しかったのです。ですが蔵が生き残るためには条件を飲むしかありません。徹底した品質造りの酒造りをすることを決断したのでした。

着実に進む品質向上への道

金融機関から融資を受けて、まずは麹室づくりを行い、手作り麹のための木箱を廃業した蔵からもらい受け、但馬杜氏組合に所属する高垣さんに来てもらうこともでき、着実に品質向上への道を進んでいきます。そして立て直しのためには、桶売りだけではダメだと考え、全国の新種鑑評会で金賞をとれるような蔵になって名前を売り込んでいこうと決めます。そこで今度は吟醸酒や純米酒を造る環境を整えるために、タンクの冷却装置などの設備を揃えていくのです。そしてできた純米酒や、吟醸酒には奥播磨と名付けて販売するようになるのです。

 

<奥播磨が成し遂げたこと>

悔しさを噛みしめて

金賞受賞を目標とすると同時に吟醸酒を販売するためには市場規模の大きい首都圏で扱ってもらうことが大切と考え、東京で無農薬販売を行っていた弟に奥播磨を託し地酒を扱う販売店に飲んでもらうのですが、評判は良くありませんでした。というのも時代は淡麗辛口が主流で、奥播磨は味がある旨口タイプ。飲みなれたお酒ではなかったことから、中々奥播磨の美味しさが理解されづらかったのです。ですが、良い物は必ず理解してくれる人がいるもので、わずかではありましたが奥播磨が扱われるようになり、そして金賞を受賞するのです。これは品質路線に変更しての四造り目での快挙だったのです

 

奥播磨のおいしさが認知され始める 

やはり賞をとるというのは凄い宣伝効果があり、今まで見向きもしなかったお店もどんどん奥播磨を扱うようになっていきます。また、当時首都圏では大手の灘酒しか出回っていなかったことも幸いして、全県の地酒をくまなく揃えたいという需要にも合致していたのです。

 

<目が覚めるような名ゼリフ> 

さて、このブログでも度々出てきます小山商店さんですが、このお酒にも関わっています。奥播磨が金賞受賞し、見る見るうちに販路が広がっていくことに舞い上がっていた下村さんですが、ある時小山商店の小山喜八さんにこんなことを言われたのだそうです。

「東京は怖いところですよ。昨日まで旨いと言っていたお客さんが明日には味が落ちたという。一度手を抜いたら、あっという間にどん底に落ちます。下村さん、それを肝に銘じて、常に品質の向上を頭に入れておいてください。質が落ちたらすぐに取引をやめますよ。ただし、いい酒を造り続けていれば、必ず売れます。下村さんのことを私は信じています」愛と情熱の日本酒(山同敦子)から引用
このセリフかっこいいですね。正直、自分はしびれました。本人にここまで言える人って中々いないのではないでしょうか?

この言葉で下村さん自身も、自分が考えていたことはどうやって売るかということばかりに目が行っていたことに気づいたのだそうです。
そして、売るのは酒屋さんに任せて、自分たちは飲んでくれたお客さんが喜んでくれるようないいものを造り続ける。それこそが造り酒屋の生きがいだと。

 

<苦難の先に待つものは>

さて、こうして下村酒造さんは奥播磨という、いいお酒を造ることができて、めでたしめでたし。・・・といけばよかったのですが、今まで一緒にお酒を造り上げてきた杜氏の高垣さんが他の蔵に行くことになってしまいました。ですが、下村さんも酒造りに携わっていたこともあり、平成14年から杜氏なしで、自分がリーダーになって酒造りがしたいと考え決断します。当初は色々な酒販店から味が落ちることを心配されたのだそうですが、奥播磨は年々美味しくなっていているのです。そしてこの決断が功を奏し、下村酒造さんでは多くの蔵で直面している後継者不足の心配がなくなったのでした。

このお酒は燗酒がおすすめでこの寒い時期にいいですよ。過去にはdancyuという雑誌で「燗にして旨い酒」という記事で圧倒的な一位に選ばれています。
よく温めた時の香りがダメだと言われる方や燗酒は安いお酒でやるものでしょということを聞いたことがある人もいるかもしれません。そういった人に一度このお酒を飲んでいただきたいです。
上で言われていることに関しては、また記事にして解説しようと思います。
地元兵庫夢錦を55%精米し、山廃造りで1年熟成させたお酒です。


参考サイト等

https://okuharima.jp/

また、この記事を書く上で、「愛と情熱の日本酒」という本をおおいに参考にさせていただきました。

 

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